『僕は花穂が好きです。こんな僕と付き合ってもらえて、花穂には本当に感謝してもしきれません。前に花穂が言ってたよね。僕が、花穂のどんなところが好きなのか知りたいって』

 兄ちゃんの、花穂の好きなところ……。

 聞きたいような聞きたくないような、僕の気持ちは複雑だ。


『僕は、もちろん花穂のことは見た目も可愛いと思うし好きだけど、何より、花穂の明るくて前向きなところが好きです』

 僕の隣に座る花穂の肩が揺れるのが視界の隅で見えた。

 見ると、驚いたようにスクリーンを見つめる花穂の目は見開かれている。


『どんなに辛いときでも弱音ひとつ吐かずに笑っている花穂を見ていると、僕も頑張ろうって思えるんだよね』

 花穂は今、どんな気持ちでスクリーンを見ているのだろう。

 確かに記憶を失う前の花穂は、本当に頼れるお姉さん的な存在で、それこそ兄ちゃんの言うように弱音を吐いているところを見たことがなかった。

 記憶をなくしてからも、取り乱していない状態では、そんな一面があった。

 不安そうにしていることはあっても、それを花穂の言葉で聞いたことはない。


『そんな花穂だから、心配になるときがある。何か花穂の限界を越えてしまうくらいに辛いことがあったときに、花穂が壊れてしまうんじゃないかって。花穂はそんなことないって笑い飛ばすかもしれないけど、絶対大丈夫なんて保証はないだろ?』