『十七歳のお誕生日おめでとう。今、花穂はこのビデオをどこで誰と見てるのかな。まぁ、わざわざそんなこと聞かなくても、僕と、きっと僕か花穂の部屋でお互いに気恥ずかしさでニヤつきながら見てるんだろうけど』


 当然のことだけど、スクリーンで笑う兄ちゃんは、もう今はこの世に存在しない人だなんて思えないくらいにイキイキしてて、まさかこの先の未来に自分が存在しないことを知らないような顔をしていた。


『あ、もしかして将太も一緒かな? これを将太も見てたら、きっと花穂と一緒になって笑ってるんだろうな』


 このビデオが撮られたのはいつかはわからないけれど、きっと夏休み前だろう。

 夏服を着ているから、きっと今年の六月以降から兄ちゃんが亡くなるまでの間に撮られたものなのだろう。


『今回はなかなか伝えられなかったことをきちんと伝えようと思って、放送部主催のVL企画、つまりビデオレター企画に参加しました。企画の詳細は今は割愛させてもらうな』


 花穂はというと、まるで食い入るようにスクリーンを見ている。

 スクリーン越しとはいえ、本物の兄ちゃんを目の当たりにしているが、今のところ大丈夫、というところだろうか。


『せっかくだから、今日はちょっと真面目な話をさせてもらおうかな』

 そして、兄ちゃんは改まったような感じに咳払いすると、まっすぐにこちらを見据える。