花穂の顔を、ちょっといたずらっぽく覗き込んでみる。


「ううんっ! そんなことないよ! 使うのがもったいなくなるくらい可愛いタオル、すごく面白いし嬉しい!」

 ブンブンと音が鳴りそうなくらいに首を横に振りながら、タオルでできたクマのぬいぐるみを抱きしめて、必死で否定する花穂が可愛くておかしかった。


「……良かった」

 どこに飾ろうかな、と自分の部屋を改めて見回した花穂は、出窓になった窓辺に僕が渡したタオルでできたクマのぬいぐるみを飾ることにしたようだ。


「うん、可愛い」


 そして花穂は満足そうに窓辺に座るクマを見ると、今度は机に提げていた鞄から何かを取り出した。

 聞き覚えのあるタイトルの書かれた、レンタルのDVD。


「映画?」


 花穂が嬉しそうにこっちに持ってきたのは、三年前にヒットした映画だ。

 病気の女の子とボーカリストの切ない恋のお話だったと思う。

 お涙頂戴的要素がプンプンするあらすじから、僕と兄ちゃんは全く興味をそそられなかったんだ。

 まさか花穂が僕たちをこの映画に誘おうとしているのに気づかずに二人して独自の意見を述べたら、花穂が怒って一人で映画を観に行ったという、苦い思い出がある。