今まで見た目を兄ちゃんにしていた分、中身も兄ちゃんにならないといけないような錯覚に陥っていた。

 けれど、結局僕は僕でしかなくて、いつまでも兄ちゃんのフリを続けられないのがわかっている。だからこそ、見えないところから少しずつ自分を出していこうと思ったんだ。


 昔から兄ちゃんと比べては自分を卑下してた。

 今も僕自身の姿で花穂の問題を解決できる自信がないから、兄ちゃんの姿を借りてるんじゃないかって、兄ちゃんが死んでもなお兄ちゃんに依存しているんじゃないかって言われても、否定できない。

 現実を受け入れて前を向く必要があるのは、花穂だけじゃない。僕だってそうだ。

 それに気づいたから……。

 厳しい言い方かもしれないけれど、僕たちが前に進むためには、現実を受け入れて乗り越える必要があるんだと思う。

 だから、今度こそ僕は少しずつ兄ちゃんから自立して、“自分”を確立していきたい。

 それが、僕なりの前の向き方だ。


「嬉しい、ありがとう。中、開けていい?」


 そんな思いから僕が選んだプレゼントだからこそ、手元の白い艶のある小さな紙製の袋を花穂に渡すのは、想像以上に緊張した。

 花穂が目の前の小さな包み紙を開けると、あっ、と驚いたような顔をした。


「可愛い!」

 花穂の手の中にあった包みから出てきたのは、一見可愛らしいクマのぬいぐるみに見えるだろう。


「それね、実はハンドタオルとしても使えるんだよ」

「え!? そうなの!?」

 花穂の目が丸く開かれる。