だけど、毎日少しでも記憶を取り戻せないかと過ごしているうちに、すっかり忘れてしまっていた。


「誕生日だし、家族と一日過ごす? 毎日頑張ってるんだし、たまには休んでもいいと思うよ」

「……え?」


 誕生日は家族と。

 記憶がなくても、お父さんお母さんとはそれなりにうまくやれていると思う。

 リョウちゃんとは恋人同士だけど、もしかしたら私が記憶をなくしてるから、遠慮しているのかもしれない。

 だけど、誕生日だからこそリョウちゃんと過ごしたい。


「……それもいいけど、私はリョウちゃんと過ごしたい、かな……」


 わあああっ、自分で言って恥ずかしくなってくるよ……。

 ただでさえ暑いのに、身体中がさらに熱を産生するから何となく汗ばんできてしまった。


「いいよ。じゃあ、またいつものように花穂の家に行ったらいいかな?」

「うん」


 そんな私自身を目の当たりにして、やっぱり私は記憶をなくした状態でもリョウちゃんのことが好きなんだと改めて感じさせられた。