「……花穂、どうしたの? 震えてる……」

 心配そうにそう告げるリョウちゃんに、初めて私自身が震えていることに気がついた。


「あ、何でもないの。ごめんね……」


 目から涙がこぼれ落ちる。

 何が何だかわからないけど、不安で寂しくて、今自分が見ている世界が壊れてしまうような気がして。

 リョウちゃんが、居なくなってしまうような気がして、怖くて堪らなかった。


「リョウちゃん……」


 私の頭を軽く抱き寄せてくれるリョウちゃんにしがみつく。

 目を軽くつむったら、涙が数粒こぼれ落ちた。


「……リョウちゃんは、リョウちゃんだよね? 居なく、ならないよね?」


 リョウちゃんが小さく身震いして、私は驚いてリョウちゃんを見上げる。

 リョウちゃんは、驚いたような困ったような顔をしていて、さらに不安が煽られた。


「……ごめんね、変なこと聞いちゃった。当たり前だよね。気にしないで」

「花穂、そのことなんだけどさ……」


 申し訳なさそうに下げられたまゆ。

 どうしてだか、私は時々リョウちゃんの言葉を聞くのが怖いときがある。


「いやっ! 何も言わないで!」

 私は思わず耳をふさいでそう叫んでいた。

 同時に、激しい頭痛に見舞われる。