抱きしめ返してくれたってことは、私のことが嫌になったっていうわけではないのかな?


 私は机の上に置いた、リョウちゃんにさっきまで見せていたクラスメイトの写真を再び手に取る。

 何となく懐かしいような気はするのに、誰一人として面白いくらいに名前が出てこない。

 もう私は、夏祭りで巻き込まれたという事故以前の記憶を取り戻すことはできないのだろうか。


 医者には、私が何かを思い出そうとすると頭痛がすることや、それと関係があるのかわからないけど時々意識が飛んでしまうこととその直前の記憶がなくなってしまうことがあることを話している。

 身体には何の異常もないことから、心因性のものが原因だろうとのことだ。

 そして、消えてしまった記憶については、無理に思い出さないくていいと言われている。

 リョウちゃんに言うと、記憶探しの旅を中止されてしまいそうで言っていない。

 だって、私は思い出したいんだ。

 早くリョウちゃんとの思い出を取り戻して、本当の意味での恋人に戻りたいのだから。


「痛……っ」


 それなのに、モヤの濃い何かを思い出そうとすると、やっぱりズキンと頭が痛む。

 私はとりあえずクラスメイトの写真については、これ以上考えるのはやめて、リョウちゃんに言われた通り明日学校で聞くことにした。