「ごめんね、無理言っちゃって。新学期始まるまでに記憶が戻らなかったら、クラスメイトには正直に本当のこと話すからいいよ」

「……え。ごめんな、役に立てなくて。ちょっとまた調べてみるから」

 写真のクラスメイトの名前を調べる方法なんて、あるのだろうか。


「見せたいものって、これだけかな?」

「……うん」

 とうとう、リョウちゃんが帰ってしまう。


「明日はまた高校に行くので良かったよね」

「うん」

 やだ、帰らないで。


「あ、それなら明日、職員室に寄ってこの写真の花穂のクラスメイトの名前を聞くってのもありか」

 私を、一人にしないで……。


「……花穂?」

 気づけば私はリョウちゃんに近づいて、ぎゅうっとリョウちゃんに抱きついていた。


「あ、ごめんなさ……っ」

 慌ててリョウちゃんから離れようとしたところで、リョウちゃんに後頭部に手を添えられて、私はリョウちゃんに抱きしめられていた。


「ごめん。ごめんな、花穂……っ」

「え? ううん、私こそごめんね」


 リョウちゃんの腕は、微かに震えていた。

 それに気づいていたけれど、その理由は聞いてはいけないような気がして聞けなかった。


「……じゃあまた、明日な」

「うん……」

 リョウちゃんが何か言いたそうにしているように感じたけれど、結局何も言わずに部屋を出ていった。