「好きだよ、花穂のこと、すごく。本当は、ずっと好きだった……」

 まさかこんな形でずっと秘めてきた想いを言葉にするなんて、思いもしなかった。

 本当はこんなこと言ってる場合じゃないんだけど、もしかしたら全てを知ったら花穂は僕なんかと口をきいてくれなくなるかもしれないんだから、このくらい許してほしい。


「リョウちゃん……?」

「だけどね、ごめん。実は僕、本当は……」


 そう言って、僕は自分の髪を──兄ちゃんがしていたのと同じように分けていた髪を無造作にクシャクシャとかき混ぜて、本来の僕の姿にしようとした。

 だけど、僕が本来の僕の姿に戻る前に、花穂が両手を頭に当ててその場に崩れ落ちた。


「……花穂っ!?」


 頭はグシャグシャのままだけど、今はそんなの構ってられない。

 僕は慌ててその場にしゃがみこんでいる花穂のそばに膝を折る。


「どうしたの? 頭、痛いの?」


 もう陽は西の空に沈みかけているということから花穂の表情は見えづらいけれど、酷く辛そうに頭を抱えていることだけはわかる。

 それと同時に、目の前の光景にデジャヴも感じていた。

 花穂が最初に倒れた天文学部の合宿のとき、──そして、つい先日の水族館デートの再現をしたときのことだ。