日を空けたところで結果は同じかもしれない。けれど、やっぱり倒れて記憶を失ってしまうくらいなのだから、花穂の心に相当な負担がかかっているのは想像がつく。

 だから、花穂の中には先を急ぐ気持ちがあるみたいだが、無理をさせたくなくて、この数日間は高校付近の遊び場として知られる商店街をまわることにしたんだ。

 そうしてタイミングよく園田先輩の見解を聞いた直後の海デートの再現、というわけだ。


 兄ちゃんの日記によると、今回の海でのデートは学校帰りに行ったらしい。

 去年のクリスマス。

 ちょうどその頃やっていたドラマの影響で、夕方の海辺を恋人と二人で歩きたいという花穂のささやかな願いを叶えるために行ったんだとか。

 そのあとは、少し背伸びしてレストランで夕食を食べて帰って来たらしい。


 今の気候とは真逆だし、日の入りも八月の今日よりもずっと早かっただろうから、完全に再現するというのはまず不可能だ。

 ただでさえ日の入りの遅い八月だ。日の入りを見たあとに夕食をレストランで食べて帰ったら、花穂を家に送り届けられるのは夜遅くになってしまう。流石にそれは高校生の分際でいただけない。

 記憶探しの旅について花穂のお母さんには僕からも話をしてあるとはいえ、さすがに心配させてしまうだろう。

 そんな事情を話したところ、花穂はそこはすんなり理解してくれたからよかった。