もし花穂が本当に兄ちゃんのことを思い出そうとする度に真相心理がそれを拒んで、思い出しかけたことを忘れてしまうのなら、いつまで経ってもゴールにたどり着けないということだ。
「……俺、思うんだけどさ」
僕が考えあぐねていると、同じように考え込んでいた園田先輩が口を開く。
「記憶探しの旅とか言ってないでさ、本当のことを話したらダメなの?」
「……え、っと」
「梶原さんが涼太の姿に反応したから、将太が涼太に成りすまして記憶を戻す手助けをしてる話は聞いたけどさ、それって、本当に梶原さんのためになってるのかって話」
「それは……」
僕のやっていることが、花穂のためになっているのかどうか。
その問いに、すぐさま“うん”とは言えない。
だってそれだけのことを、まだ僕は成し得ていないのだから。
今のままでは、僕は兄ちゃんに成りすまして花穂のそばにいるただの嘘つきでしかない。
「将太はどう思うかわからないけど、もし梶原さんが自己防衛から思い出そうとしても過去に蓋をしてるなら、涼太がいない現実をくらませているのってあまりよくないように思う」
「でも、自己防衛するくらい辛いことなら、無理に思い出させるのは……」
「そう思う気持ちもわからなくはないが、じゃあそれなら一生梶原さんが現実から目を逸らしたまま、将太は涼太に成りすましたまま生きていくのか?」
「……それはっ」
「……俺、思うんだけどさ」
僕が考えあぐねていると、同じように考え込んでいた園田先輩が口を開く。
「記憶探しの旅とか言ってないでさ、本当のことを話したらダメなの?」
「……え、っと」
「梶原さんが涼太の姿に反応したから、将太が涼太に成りすまして記憶を戻す手助けをしてる話は聞いたけどさ、それって、本当に梶原さんのためになってるのかって話」
「それは……」
僕のやっていることが、花穂のためになっているのかどうか。
その問いに、すぐさま“うん”とは言えない。
だってそれだけのことを、まだ僕は成し得ていないのだから。
今のままでは、僕は兄ちゃんに成りすまして花穂のそばにいるただの嘘つきでしかない。
「将太はどう思うかわからないけど、もし梶原さんが自己防衛から思い出そうとしても過去に蓋をしてるなら、涼太がいない現実をくらませているのってあまりよくないように思う」
「でも、自己防衛するくらい辛いことなら、無理に思い出させるのは……」
「そう思う気持ちもわからなくはないが、じゃあそれなら一生梶原さんが現実から目を逸らしたまま、将太は涼太に成りすましたまま生きていくのか?」
「……それはっ」