｢あー、怖かったぁ、｣
如月さんが行って、どっと肩の力が抜ける。
｢ね、ねぇ結衣、今のって…｣
穂花ちゃんが恐る恐る私に問いかける。
｢ハッタリだよ。あんないじめに証拠なんて出るわけないし、裁判の勝ち目も薄いだろうね。｣
しれっと答える私に、穂花ちゃんははぁぁ、と大きくため息を着いた。
｢あんたね…バレなかったから良かったものの…｣
｢あはは…でもスカッとしたでしょ？穂花ちゃんは1番いじめの被害が大きかったわけだし。｣
苦笑しながら言うと、穂花ちゃんが私の頭にぽん、と手を置いた。
｢被害が大きかったのはあんたもでしょ。でも、ありがとう。｣
そう言うと穂花ちゃんは裕翔くんの隣に行き、
｢行こ！班のみんなで！｣
笑顔で手を差し出した。


｢須磨さんって、なんか変わった？｣
前の2人を眺めながらゆっくり歩いていると、今までずっと無言だった遙くんが話しかけてきた。
｢そう、かな？自分じゃよくわかんないや。｣
｢変わった。ここ最近で。普段の様子は前と同じだけど、時々別人みたいになる。さっきだって、前はあんなはっきり言ってなかった。｣
思った以上にさっきの行動を見られてたみたいだ。
｢前は、言わなかったね。ううん、言えなかった。怖かったんだよ。でも、今は違うから。もう、傷つけない。｣
｢ふーん。｣
どこか興味無さそうな遙くんの返事で、私たちの会話は途絶えた。