「えー、それではー、これから昼食をとった後、自由行動となります。くれぐれも、羽目を外しすぎないよう。浅葱高校の名に恥じぬように行動して下さい。それからー」
校長の長い長い話が進む。これが終わればお昼、そして自由行動だ!そう思うと、私は待ちきれなくなってソワソワしてきた。すると、穂花ちゃんに横からペシっと頭を叩かれた。

「と、言うわけでー、高校最後の大きな行事です。みなさんで、楽しい思い出を作ってくださいねー。では、解散ー」



ようやく自由行動が始まり、私たちは旅館から少し離れた場所にある商店街に班のみんなで向かっている。
森の中にそびえ立つ旅館の周りには木しかないから、5分ほど歩かないといけない。

「結衣、あんたはもう少し、落ち着いてられないの?それとも、せっかくの思い出を全部旅館の一室で終わりにしたい、と?」
穂花ちゃんがじろり、と効果音が出そうなほど睨んできながら言った。
「ごめんってー。あの校長話長いから待ちきれなくてさー。」
手を合わせ穂花ちゃんに謝罪する。
あそこで叩いて貰っていなかったら、これから先の自由行動はおろか旅行が終わるまでお説教の可能性もあった。穂花ちゃんに感謝だ。
「須磨、気にしなくていいぞ。こいつも、自由行動が楽しみすぎてニヤけてたんだ。須磨のこと叩いたのも、半分は自分が落ち着くためって痛!」
後ろを歩いていた班のメンバーの一人である裕翔くんが前に出てきて話し始めた、ところで穂花ちゃんに思いっきり足を踏まれて撃沈。
そのわきを足早に通り過ぎる穂花ちゃんを追いかけようかと思うが、道にうずくまっている裕翔くんを見て一瞬足を止める。
「結衣!そんなバカ置いてっていいからさっさと行っちゃお!」
穂花ちゃんは随分ご立腹のようだ。
でも班の人とはぐれちゃうと困るよな、と悩んでいると、
「須磨さんは早瀬さん追いかけてくれる?僕は裕翔連れて行くからさ。商店街の入口で合流しよう。」
もう1人の班のメンバーである遙くんが声をかけてくる。
「わかった。入口にいるね。」
それだけ伝える。今穂花ちゃんを見失っちゃまずい。意外と広いここでは迷子になる。急いで追いつかないと、と私は小走りで追いかけた。