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詩が退院して間もなく、律と詩は二人で事故現場の近くのタバコ店を訪れた。
彼女が救った子猫を引き取る為だ。
その子猫が無事に生きていると知った彼女は心から喜んだ。
子猫は“音―オト―”と名付けられ、平川家で飼われる事になった。
子猫を引き取る事は詩自身の意思によるものだった。
彼女の家族もそれを尊重し、今では家族全員が子猫のオトの虜(とりこ)だ。
「それでね、昨夜はオトがアタシの布団の中に潜り込んできてね――…って聞いているの、律?」
「ハイハイ、聞いてますよ。朝から何十回も同じ事を……」
登校中、何度も何度も同じ話を繰り返す幼なじみに心底呆れ気味の律が、少々ヤケになりながらも返事をする。
「返事に心がこもってない!」
返事に不満をあらわにする詩に対して「込めてないですから」と律はさらに突き放した。
オトの事はめちゃくちゃ可愛いのだが、詩の話は正直なところお腹いっぱいだ。
「……それでさ、出掛け先から帰ってくると、ニャーって鳴いて出迎えてくれるんだよ。超可愛くない!」
詩は懲(こ)りた様子もなく、オト愛を疲れるまで語りあげるのだ。