例年なら夏の太陽をたっぷり浴びて健康的な肌色をしている頃なのに、病室に籠もりっきりの今では気持ち分だけ青白く見えてしまう。
詩は元々身体の線が細い方だったが、筋肉を使わない身体は事故にあう前と比べてずいぶん痩せたように思う。
律は彼女の手をほんの少し持ち上げる。

鶏ガラじゃん……
そう心の中で悪態ついた。
実際、彼女の前でそんな事を口にすれば拗(す)ねてしばらく口をきいてくれないだろう。
それでもいいから、律はあの頃と同じように詩と会話をしたかった。

「ちょっと売店に行ってくるわね。りっちゃん、詩のこと任せてもいい?」
「いいよ」

律が快諾(かいだく)すると、詩の母は小さなトートバッグを持って「じゃあ、少しだけお願いね」と病室を後にした。
ここから律の日課は始まる。

「夏休み明けのテストも終わったぞ。早く起きて補習受けた方が身の為だぞ」

丸椅子から少し身を乗り出して、眠る彼女の頬に軽くキスを落とす。
その日あった出来事や思った事を知らせるのだ。