律は本宮に促(うなが)されるまま小封筒を開ける。
中には“学業祈願”と金色の刺繍が施(ほどこ)された紫色のお守りが一つ入っていた。

「“律はみんなに期待されていい大学に入って、いろんなことを勉強するんだよ”って誇らしげでさ。“アタシじゃ勉強とか教えられないし、できる事と言えば祈ることくらいだから”って俺に頼み事までして……。ほんと詩は律が大好きだよ」

本宮がしみじみと語る傍で、律は小さなお守りをギュッと握りしめている。

「そんなこと無いよ。俺……多分、詩に振られたし」

自分で言って、やはり悲しくなった。
本宮はそんなバカな……というような動揺と驚きが入り交じった表情をしている。

「祭りの夜、詩に気持ちを伝えたんだけどさ、こたえてもらえなかった」
「そうだったのか……」

律から事情を聞いても、本宮はいまだ信じられない気持ちでいっぱいだった。
彼の目には律と詩がずっと相思相愛に見えていたからだ。

「俺、男らしくすっぱり諦めることも後一歩踏み込むこともできなくてさ。心のどこかで“まぁ、そのうちまたチャンスがあるだろう”くらいにしか考えてなかったんだよ」