詩が事故にあってからずっと思っていたことだ。
「何言ってるんだよ……。そんなわけあるか」
本宮は即答で否定する。
律もそう返事がくると思っていた。
こんな風に言ってもらえれば心が楽になると思っていたのかもしれない。
しかし、実際はその逆だった。
「だってさ、もし俺が一緒だったら考えるだろ……」
「あぁ、そうだな。でも……仮に律が一緒に居たとして、子猫はあの場に現れなかったのか?事故を起こした車は通らなかったのか?律は詩を救えたか?」
「…………」
そんなこと分かるはずがない。
どれもこれも結果論でしかないのだから。
律は黙って俯いてしまう。
「詩は律を責めたりしないさ。むしろ、律が自分自身を責めていると知ったら怒るだろうな」
本宮はそう言って、財布の中から小封筒を一つ取り出して律に差し出した。
小封筒の表には神社の名前が朱色で印刷されている。
「これは……?」
律は小封筒を受け取り、本宮に中身を尋ねた。
「詩から頼まれていたんだ。出張で山口県に行くって言ったら、お守りを買ってきて欲しいって。開けてごらん」