郵便局で出会った女性が言っていた通り、昨日詩が助けた子猫はタバコ屋の店主に保護をされていた。
「後ろ足を少し怪我しているようでな……。思うように歩く事ができなかったんだろうさ」
タバコ屋の店主はそう言って、店の奥で保護していた子猫を律の元に連れてきてくれた。
両手におさまるほど小さくて、大きな瞳がウルウルと涙目になっている。
怪我をしているという後ろ足は白い包帯できれいに治療されていて、顔つきは元気そうだ。
時折、ミャー……と律の顔を見ては鳴いて呼ぶ。
「兄ちゃんのことが気に入ったようだな」
タバコ屋の店主は微笑ましそうに言って、子猫を律に手渡した。
ふわふわとした猫毛が指先に絡んで、体温は驚くほど温かい。
詩が救った命が自分の手の中にある――…
そう思うだけで目頭がジーンと熱くなった。
「この子、俺に譲ってくれませんか?」
律は子猫を抱いたまま店主に問いかける。
高校生の戯言(たわごと)だと思ったのだろうか、店主は「そうだなぁ……」と言葉を濁す。