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翌日、律は市立病院の帰りに詩が事故にあったという場所を訪ねた。
前日に大きな事故が起きたとは思えないほどいつも通りの光景に戻っている。
仕事に向かう人や犬の散歩をする人など様々な人とすれ違った。
律は細い路地を覗いてみたり、小さな生き物が隠れていそうな場所をたずね歩いてみた。
詩が助けたという子猫を探す為だ。
「……何か落としたのかい?」
下ばかり見て懸命に子猫を探す彼に、中年の女性が声をかけた。
子猫を探すことに夢中になっていた律は驚いて身体がビクッとはねる。
いかにもこちらを怪しんでいる女性の視線に苦笑した。
「い、いや……その……子猫を探していて……」
律が申し訳なさそうに答えると、女性は「アンタんちの猫かい?」と再び問う。
「違うんですけど……。えっと、昨日ここで事故があったと思うのですが、その女子高生に助けられた子猫を知りませんか?」
律は女性に尋ねてみた。
女性は首を傾げていた。
そんなこと知るはずがないのに……と後悔してももう遅い。