***
今日も無事に幼なじみのモーニングコールを成功させ、始業式を終えて、夏休み前の最後のHRが始まった。
これでしばらくモーニングコールはお休みだ。
必要以上に早起きしないで済む喜びは少しあるが、詩に会える口実が一つ減ってしまう寂しさの方がいつも大きい。
担任の越智(おち)先生が成績表を手渡しするために出席番号順に名前を呼んでいた。
彼に呼ばれた生徒は順々に教卓の前までその冊子を受け取りに行く。
「平川……平川 詩」
担任が名前を呼ぶが反応が無い。
それもそのはずだ。
律の前の席に座る詩は机に突っ伏してすでに夢の中なのだから。
「藤沢、平川を起こしてやれ」
学校でのモーニングコールも律の仕事となっていた。
律は「はい」と返事をして夏休みの宿題用に貰った問題集をくるっと丸める。
そして、後ろの席からその問題集で思いっきり彼女の頭を叩いた。
学校では優しくなどしてやらない。
クラスメートの見ている前で朝のような起こし方などできる訳がないのだから。