「詩らしいね……」

律も同じように答える。
本当に彼女らしい理由だと思った。
昔から犬や猫が大好きで、よく両親たちに内緒で捨て猫の世話をしたものだ。
可哀想で弱いものを放っておけない性分は今でも変わらない。
律は彼女のそんなところも大好きなのだが、こんな事になるくらいならその部分だけは大いに嫌いになってしまいそうだった。

「先生によれば、怪我はたいしたこと無いんだって。傷もじきに治るだろうって……」
「そっか」
「ただ……頭を強く打ったみたいでね。意識が戻らないの。せっかく助けた子猫も自分の目で無事を確認できないんじゃ意味無いじゃないね……。ほんと……この子ったら抜けてるんだから……」

話しをしていれば心に積もった悲しい気持ちを誤魔化せると思っていたのだろう。
結局、それも裏目に出てしまって詩の母は堪えきれなかった涙をポロポロと零す。
お腹を痛めて産んで、十八年育てた娘の変わり果てた姿を目の当たりにした彼女の心境を思うと、“その辛さ分かるよ……”なんて言葉を律は簡単に言えないのだった。