「そんな訳ないだろ。本宮先生みたいな大人の男が詩みたいな子どもを相手にするかよ」

律はまるで決めつけたみたいな言い方をした。
どちらかと言えば“そうあって欲しい”と強く思っている自分に呆れながら。
それを聞いた太田は「つまんねぇ……」と不満そうにしている。
親友と他愛ない会話をしている間にHRが始まる時間になった。

担任の越智先生が「おはよう」と挨拶をしながら教室に入ってくる。
この時間になっても詩は学校に姿を見せなかった。


あれほど、遅刻はするなと念を押したのに……


「あれ、平川は欠席か?藤沢、何か聞いていないか?」

担任が出席簿を見ながら律に尋ねてくる。

「いいえ、何も……」

そう答えるしか無かった。
彼女が今どこで何をしているのか本当に知らないのだから。
「おかしいな……」と担任は首を傾げる。
律は鞄からスマホを取り出して、詩に連絡を取ろうと画面を開いた。

その時、教室のドアがガラッと強めに開く。
息を切らして入ってきたのは美術教師の本宮 鷹之だった。