「ところで……お前の方はどうなんだよ。平川に告白したのか?」

太田がお決まりの質問を律に投げかける。
律は鐘三つ分の間を置いてから「多分、フラれた」とあっさり白状した。
太田は彼がいつもみたいに“俺の勝手”と答えると思っていた。
それが律と太田の間に出来上がった会話のやりとりだったから。

「えっ……?えっ、今何て……?」

太田は戸惑いを隠せない様子で再度問う。

「だから、フラれた」

律も再び同じ答えを出して、その後に「……と思う」と小さく付け加えた。

「えっ!フラれた⁉」

太田は居てもたっていられず大きな声を出してその場で立ち上がってしまう。
夏期講習に参加している生徒たちの視線を一身に受ける。
教室を出て行こうとしていた担当教師の視線も一緒に向けられた。
律は慌てて太田を座らせる。
自分たちに向けられた多数の視線にはハハハッ……と乾いた苦笑いで誤魔化した。

「てか、さっきから“多分”とか“……と思う”とか何なんだよ。律のことなんて好きじゃないって、平川からハッキリと言われたのか?」

歯切れの悪い律の物言いに太田は表情を曇らせる。