律の日課は詩のモーニングコールだ。
低血圧で寝起きが悪い詩は誰がどうやったって起きようとしない。
詩のペースに付き合っていると律も毎日遅刻をしてしまう。
だから、律が詩を起こすのだ。
これは彼自身が決めたことだった。
律は詩の部屋の前まで来ると、コンコンと形式的なノックをする。
どうせ返事など無いのだけど、仮にも女の子の部屋に入るのだから念のため。
「詩、入るぞ」
そして、一応声かけもしてドアを開ける。
案の定、詩はまだベッドの中だった。
「詩、朝だぞ。起きないと終業式に遅刻するぞ」
律は詩の身体を揺さぶって起こそうと試みる。
彼女は「うーん……」と唸(うな)っているものの目は開かない。
これもいつも通り。
「明日から夏休みなんだから、今日ぐらいしゃんと起きろって!」
律は掛け布団をはぐった。
何かよく分からない動物キャラクターのプリントTシャツに中学時代の指定ジャージ姿の詩があらわになる。
華の高校三年生にはとても思えない。