しばらく歩くと、さっきまで賑やかだった人通りも急に少なくなって、あたりが田んぼや畑に囲まれる。
人が二人やっと並んで歩けるほどの細い道。
横を流れるのは地元でも有名な一級河川。

「あっ、流れ星」
「えっ!嘘!?」

プラネタリウムにあるような満天の星空はいつも変わらず夏の夜空を輝かせているけれど、律は儚く流れて消えてしまう星だけは見た事がなかった。
必死でその流れ星を探そうと夜空を見上げている律に、詩は茶目っ気溢れる笑顔で「うっそー」とからかう。

“流れ星が消える前に願いを言えればその願いが叶う”と誰かが言った。
律にはどうしても叶えたい願いがあったから、少しムッとした。

「律って頭良いのにすぐ騙(だま)されるよね。去年も同じネタで騙されたの覚えてないの?」

詩は夜空を見上げて言った。
それは彼女が言う事だから。
何でも信じてしまう……信じたいと思ってしまう。
自分だけこんな気持ちを抱えているのが悔しくて、律は暗がりの夜道を指さした。