気付けば、気にしてもなんにもならない事を些細(ささい)なきっかけで悶々(もんもん)と考えるようになってしまっていた。
「ほら、焼き鳥焦げるぞ」
一緒に店番をしている男性に指摘されて、律はハッと我に返る。
網に置かれた何本もの焼き鳥を手際良く動かして均等に焼いていく。
焼いて、売っての繰り返し。
早くから準備に携(たずさ)わっている男性陣は焼き鳥をつまみにすでに一杯やっていた。
「そろそろ、巫女舞が始まるぞ!」
誰かが声を上げるのが聞こえる。
社殿の横に佇(たたず)む舞台の周りには、大勢の見物人が集まっていた。
浴衣を着た人や小さい子どもを肩車しているお父さん、祭りの法被を羽織っている関係者たち。
これだけの人間が彼女の舞を楽しみにしている。
毎年、律はそれが自分のことのように誇らしかった。
笛の音が響いて巫女舞が開演する。
巫女姿の詩が舞台に姿を現した。
わーっという歓声があたりに響いた。
本当に綺麗だ――…
指の先まで洗練された演技に魅了される。