そんなことを言えば詩は目くじらをたてて怒るから律は決して口にしない。
しかし、どちらの彼女も律が愛してやまない女の子だ。

「もうすぐ巫女舞だろ。トイレ行きたくなっても知らないぞ」
「女の子にそれ言う?」
「詩も一応は女だから言ってるんだろ。その格好じゃ、男みたいにハイ、ソレと行けないんだから」
「あぁ、もう……律ったらお母さんみたい。もうこれでいいから頂戴!」

詩は我慢できなくなって、律が飲みかけていたオレンジジュースの缶を強引に奪い取った。

「あっ!ちょ……それ俺の……」

注意した時にはもう遅い。
オレンジジュースはゴクゴクと彼女の喉を潤していく。

「うーん!冷え冷えで美味しい!ありがとう、律」

詩は空になった缶を律に返して、手を振って再び社殿へ戻っていった。
律が先ほどまで飲んでいたジュースに、彼女は躊躇(ためら)いなく口を付ける。

「間接キスとか……」

こんな意識をしているのはきっと律だけ。
いつからこうなってしまったのだろう。
いつからただの幼なじみではいられなくなったのだろう。