「りっちゃんはこれからどうするの?この村に残るのかい?」

律の傍で一緒に祭りの準備をいていた駄菓子屋のおばさんが尋ねてくる。
詩の話をしていて、同じ年の律の事も気になったのだ。
おばちゃんは冷えたオレンジジュースを律に差し出して、それを「ありがとう」と受け取った。
缶を開けて一口飲んだ。

「おばちゃん、バカ言っちゃいけねぇよ!律はこの村を出て一流の大学で勉強すんだよ。それだけの才能があるんだから。そうだろ、律?」
「それは……」

律は答えに困ってしまう。
自分のやりたい事や周りの期待に応えたい気持ちと、この場所……詩のそばに居たい気持ちとが葛藤しているから。

「りーつ、ジュース頂戴」

そこへ詩がニッコリ笑って姿を見せた。
巫女舞が始まる十五分前、紅白の袴姿の彼女に律は一瞬見惚れてしまった。
中学時代のジャージ姿でベッドに丸まっていたり、カウントダウン寸前の成績表を見て溜め息をついている普段の彼女とはまるで別人のよう。