私の幻想はホントにあった

ゼドルが「くっ!!まだここにも敵がいたのか!!」と言う。

ドロンが「いや、でも、大丈夫だよ。1人しかいないし」と言う。





「さぁ、それはどうかな~?」

「くっ!!」

ゼドルは、「いや、相手の風格で何となく分かる。コイツはかなり強そうだ。さっきと違って1人しかいないけど、下手すると、さっきのヤツらより厄介かもしれない」と言う。

「え!?そんなに!?」





「その通り。俺は、この国でとても怖れられている存在。強盗、殺人、色んな犯罪をしてきたが、捕まった事は1度もない。国が手を焼いている指名手配犯さ」

「そうだ。コイツは、有名だ。確か、冷酷なる咎人〝ジャイル〟」

「あ~、そういえば、コイツの指名手配書、見た事ある!!」





「何で俺達がこの汽車に乗ると分かった!?」

「前からお前達がその娘をかくまいながら逃げ回ってるのを知ってたのさ。あれだけ大量の人数から自分の足で逃げ回るのは限界があるだろ。だから、汽車にでも乗ると思ったんだよ。まぁ、俺のカンだ。見事に当たっちまったけどな」

「くっ!!お前の狙いも、やっぱりミリカなのか!?」

「そうだよ」
「お前は、何のためにミリカを狙う!?」

「俺は、その娘にも、その娘の能力とやらにも興味がない。ただ、

ソイツを捕まえれば、金がもらえるって聞いたんでな」

「くっ!!噂通りの金に汚いヤツだ!!!」

「さぁ来い。かつて、あらゆる犯罪者から怖れられたお前らの実力を見せてみろ。まぁ、どうせ、俺が全員殺すけどな」

「くっ!!」





ゼドルが雷の魔法〝thunder voltサンダーボルト〟を使う。

しかし、ジャイルは、それをいとも簡単にかわす。





〝シュッ〟





「オラッ!!!」

次は、風の魔法〝tornadoトルネード〟を使った。

しかし、その風は、剣で切られてしまった。





〝シャッ〟





ドロンが炎の魔法〝burningバーニング〟を使い、

フェルが氷の魔法〝icicleアイシクル〟を使った。

しかし、どちらの魔法もかわされてしまった。





「くっ!!なんてヤツだ!!どの魔法も、全部簡単にかわしちまう!!!」

「そんなモンか?このレベルだと、魔法を使うまでもないぞ」

「あ!そういえば、コイツ、まだ魔力吸収のガムを噛んでない!!」





「オラッ!!!」





ジャイルは、ゼドルを斬りつけた。





〝ジャッ〟





「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」





ミリカが「ゼドル!!!」と叫ぶ。





「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」





ザレンとファンジェスとファティネがジャイルに斬りかかる。

しかし、ジャイルは、たった一振りでザレンとファンジェスとファティネを吹っ飛ばした。





〝カァン〟





「わあぁぁぁぁぁぁぁ」





「くっ!!コイツは強い!!!」





ミリカが「ホント強い!!こんなの、どうやって倒すの!?」と言った。

ゼドルは「大丈夫だ!!俺達を信じろ!!」と言う。





ゼドルは、「ヤバい・・・もう1時間経つ・・・そろそろ、もう1枚ガムを噛まないと・・・」と言った。

「皆、そろそろ効き目が切れる!!ガムを噛め!!」

「うん」と、仲間達が答える。





皆、ガムを噛んだ。





ゼドルと仲間達は、再びジャイルに立ち向かった。





「はぁぁぁぁぁぁ!!!」

「ムダだ」





〝カァン〟





「うわっ!!!」

「ダメだ!!ビクともしない!!クソッ!!コイツは、一体何なんだ!!この強さ、まるでバケモノみたいじゃないか!!」





〝MaGistic Security Guard〟の中で1番強いリーダーのゼドルも、

珍しく苦戦している。





「諦めるな!!考えろ!!コイツだって、強いけど、どっかに弱点があるはずだ!!見極めろ!!コイツの弱点!!」





ジャイルが「フンッ!!こんなモンか!!甘い甘い!!お前らの攻撃なんぞ、全部見切ってる!!」と言う。

「くっ!!!」
「ハッ!〝見切ってる〟!?」





その時、ゼドルは、ジャイルの言った「見切ってる」という言葉が引っかかった。





「そういえば、コイツ、何かおかしい。俺達の魔法をかわす時も、剣の攻撃を振り払う時も、妙に反応が速過ぎる」





ゼドルの仲間達がめげずに立ち向かう。





「はぁ~っ!!!」





〝カァン〟





「うわっ!!!」

「くっ!!!ダメだ!!!」





「やっぱりダメだ。アイツの弱点は何だ?」





すると、ジャイルは、後ろから飛んできた蚊に刺された。





〝パン!〟





「うっ!クソッ!やりやがったな!」

刺されたが、すぐに潰した。





それを見て、ゼドルは、「変だ!」と思った。





(何でコイツ、俺達の攻撃には、全部、素早く対応出来るのに、たかが蚊なんかに気がつかないんだ?小さいからか?いや・・・まさか・・・ハッ!そういう事か!良し!じゃあ!!)
ゼドルが消えた。





「ア・・・アレ?アイツは、どこに行った?」





〝ザンッ〟





「いてっ!!!」

「何だ一体!?」





ジャイルはもちろん、ミリカも、ゼドルの仲間達も、皆、驚いている。





「何が起こったんだ!?」





「このヤロー!!」





〝ボコッ〟





「うわっ!!!」





すると、次の瞬間、ゼドルが現れた。





〝シュン〟





「やっぱりな。コレがお前の弱点だったんだ」

「何!?」

「さっき、お前が蚊に刺された時、おかしいと思ったよ。

俺達の魔法を簡単にかわして、一斉にかかっても、全部見切ってしまうお前が、

たかが蚊なんかに刺されて、全く気がつかなかったんだから。

つまり、お前が対応出来るのは、姿が見えている相手だけだ。多分、お前は、

あまりにも目が良過ぎて、人やモノの動きがゆっくりに見えるんだろう。並外れた視覚、

それがお前の特殊能力みたいなモンだ。そうでもなきゃ、俺達の魔法や攻撃を

あの特殊ガムなしで全部見切るなんて出来ないだろう。だから、透明化したんだよ。ちなみに、

透明化すれば、身体だけじゃなく、衣服や武器も、全部透明になる。そんで、

透明になった状態で攻撃したんだ。

いくら動きがゆっくりに見えようが、見えなきゃ意味がないからな」

「くっ!クソ~!!見抜かれてたのか!!」

「ウチにも、特殊能力並みに身体能力が高いヤツがいるんでね!!どうだ?まだやるか?」





ミリカは、(凄い!ゼドルは、本当に凄い!!強いだけじゃなくて、洞察力も鋭くて、頭も良いんだ!!

17歳なのにリーダーをやってる理由が良く解る!!)と思った。





ファンジェスは、

(凄い!!〝透明化〟は、超高等な魔法!!まさか、そんな魔法が使えるなんて!!!さすがウチのリーダー!!!)と思った。
「くっ!!思ったより強いな。だが、これで勝ったと思うなよ。

それに、この先、俺よりも強いヤツが現れるだろう」





「じゃあな」



ジャイルは、煙玉を投げた。





〝ボン〟





「うっ!!ゲホッゲホッ!!」





煙が消えた後、見てみると、ジャイルは

、もう、いなかった。





ゼドルが「クソッ!逃がしたか!!」と言う。

「まぁ、良かったんじゃない?皆、無事だったんだし」とミリカが言う。

「まぁ、それもそうだな。でも、アイツは、また襲ってくるかもしれないし、それにアイツ、〝もっと強いヤツが現れる〟って言ってたからな」

ギーゼフが「そうだな。この先は大変だな。でも、負けるワケにはいかねぇだろ!!」と言う。

「そうだな!!」





そして、しばらくして、汽車が停まった。





ザレンが「とりあえず、ここまで来たけど、これからどうする?」と言った。
「うん。とりあえず、食べよう。何か、激しく動いて腹減っちゃったし」

「そうだな!!まだ昼飯食ってねぇし、〝腹が減っては戦は出来ぬ〟っていうしな!!食える時に食っとこう!!」





ゼドル達は、レストランに向かった。

皆、料理を注文し、食べる。





ドロンがゼドルに「いや~、さっきは凄かったよ!まさか、ゼドルが〝透明化〟の魔法を使えるなんて!!」と言った。

「そうか?」

すると、ファンジェスも、「うん!私も驚いた!!」と言った。





皆、ゼドルの事を誉めたたえる。





ミリカは「さっきの魔法って、そんなに凄い魔法だったんだ!!」と言った。





ゼドルは「皆、常に気を抜くなよ。ミリカを襲うヤツらは、どれだけいるか分からないし、いつ襲ってくるか分からないからな」と言う。

ドロンが「そうだね」と言う。

ドロンはミリカに「しかし、ミリカも大変だね。突然、こんなところへやって来て、しかも、たくさんのヤツらから狙われる事になっちゃって」と言った。

ミリカは「はい・・・・・・」と答える。

「でも、帰れると良いね!!」

「はい!!」





すると、そんな会話をするミリカとドロンを見て、ゼドルが少し寂しそうな表情をしていた。





フェレナがゼドルに「ねぇ、この後、どうするの?」と聞いた。

「そうだな。とりあえず、宿屋を探そう。それと、あの店には、

しばらく戻れない。もう、場所が知られてる。いれば、狙われやすいからな」

「そうだね」と、フェレナが答える。

ミリカが「ごめんなさい皆さん。私のせいでこんな大変な事になっちゃって」と言った。

ゼドルが「何言ってんだよ!ミリカのせいじゃないよ!!それに、俺達は、これが仕事だからな!!」と言う。

「ありがとう・・・・・・!!本当にありがとう・・・・・・!!!」





ザレンが「良し!ミリカが元の世界に帰るまで、俺達がミリカを守り抜くぞ!!」と言った。

皆、「おう!!」と言った。
その後、宿屋を探した。





ギーゼフが「あ!あそこに宿屋があるぞ!!泊まろう!!」と言った。

ゼドルが「そうだな!!」と言った。





「すいませ~ん!!ここに泊めてください!!」

「はいよ」





ゼドル達は、その宿屋に泊まる事になった。

その夜、ゼドルとミリカは、外で話した。





「今日のゼドルもカッコ良かった~!!皆、手こずるような相手の弱点を見つけて倒すなんて、さすがゼドルだね!!それに、私は、魔法の事、良く知らないから良く分かんないんだけど、難しい魔法も使えるみたいだし、さすがリーダーだね!!」

「そうか?」

「うん!!」

「まぁ、俺は、リーダーとして、重い責任を背負ってるし、依頼人だけじゃなく、仲間の皆も守らないといけないからな」

「そっか!やっぱり凄いね!!17歳なのに、威厳と責任感が凄くあるね!!さすがリーダー!!」

「ありがとう」

「あ、でもさ・・・」

「ん?」





「そういえば、ギーゼフさんって、何で、戦う時、いつも魔法を

使わないの?」

「あ~・・・・・・、アイツは、〝使わない〟んじゃなくて、〝使えない〟んだ。魔法を」

「そうなの!?」

「うん。アイツは、昔、魔法が使えない事で、たくさんの人達に差別されてたんだ」

「そうなの!?」

「うん。けど、まぁ、元からの才能もあったから出来たんだけど、差別されないように、血が滲むほど鍛えて、身体能力をかなり高めて、魔法使いと互角に戦えるようになったんだよ。アイツは、この店で唯一、魔法が使えないメンバーなんだ」

「へ~!!そうなんだ~!!すご~い!!!魔法が使えないのに、

魔法使いと互角に戦えるなんて、カッコ良い~!!!」

「だろ?!」





「うん!!でも、この世界には、魔法を使えない人もいるんだね」

「うん。魔法が使えるか使えないかは体質の問題だからね。使える人も多いけど、使えない人も多いんだ。で、魔法が上手く使える人ほど優位に立てるけど、使えない人は、差別されたり、奴隷にされたりしてて、身分も低いんだ」

「そうなんだ・・・・・・大変なんだね・・・・・・あ!もしかして、この前、ゼドルが言ってた、〝魔法が使える事は良い事ばっかりじゃないって、そういう事なの・・・・・・?」

「まぁ、それもある。ギーゼフも、とても大変だったらしいからな」

「でも、ギーゼフさんは、ちゃんと居場所を見つけられて良かったね!!」

「そうだな!!」





その日、ベッドで横になりながら、ミリカは考え事をしていた。





そういえば、ギーゼフさん、いつも、1人だけガムを噛んでなかったな~。それにしても、魔法によって差別があるなんて・・・・・・

ここは、私がずっと夢見てたような、ただ〝ロマン〟があるだけの世界じゃないんだ・・・・・・とても過酷なんだ・・・・・・

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