そうか、と言ったあとで、利樹は言った。

「確かに、俺は高坂なのかもしれないな」

 ん? という顔をした八咫に、
「お前が老眼鏡をかけているのが妙な感じだ」
と笑うと、

「かけてちゃ悪いか。
 私を幾つだと思ってるんだっ。

 最早、こうして生きて仕事ができてるだけで、御の字だっ」
と怒鳴ってくる。

「さっさと帰れっ。
 お前の顔を見るだけで虫酸が走るっ」
と言われ、

「……ありがとう」
と利樹は言って、理事長室を出た。

 以前、八咫が見て、虫酸が走る相手が高坂だと聞いていたからだ。