なにしてるんだろうな、あの人……。
高跳びのマットの側から真生は高い木の影になってる場所、校舎の側溝の側で、例の這う男の頭を踏みつけようとしている利樹を見た。
踏もうとして、利樹は結局、やめたようだ。
そんなところも高坂さんと似ている、と思い、笑いかけた真生だったが、すぐにその笑いを止める。
弓削利樹は高坂であって、高坂ではない。
弓削利樹として生きてきた彼に、高坂を押し付けることはできない……。
「真生ー。
跳びなよ、早くー」
と夏海(なつみ)に言われ、はいはいーと返事をし、真生は線まで下がった。
「行きますっ」
と言って走り出したが、
「その気合でバー蹴り落とすんだってば」
という夏海の怪しい予言のまま、蹴り落としてしまった。
「もう跨ぎなよ……」
とマットに崩れ落ちた真生は、頭の上から夏海に言われる。