ただ似ているだけの人なのかもしれないと、ほんのわずかながらの不安もあった。

 でも、それも今、消し飛んだ。

 いつの間にか曲は終わっていたが、利樹はまだ真生を抱き締めていて、真生もまだ、利樹の胸にすがっていた。

「真生ーっ」

「何処行ったの、真生っ。
 掃除おわったわよ、このサボりっ!」
と下から夏海たちの声が聞こえてくる。

「行くか」
と離れた利樹が真生の手をとり、先に少し階段を下りる。

「……はい」
と微笑みついて行こうとした真生に利樹が言った。

「……出ておいてよかった、斗真の家」

 遠慮なくお前を連れ込める、と呟くのが聞こえてきた。

 いや、やっぱり、この人高坂さんだな……と思ったとき、

「真生ーっ!」
と下で夏海たちが叫ぶ。

 はいはい、と笑って返しながら、真生は利樹とともに階段を下りた。

 屋上に続く扉から差し込んだ、熱い夕日を背に浴びながら――。




                       完