前世なんて、簡単に信じられるものではない。

 だが、こうして、その前世とやらと因縁のある霊は、今も此処に存在しているし。

 校舎の方で、多江(たえ)という炎に包まれた女の霊も見た。

 凄惨な死に際を留めたままの哀れな霊を見ても、あまり感情を動かさないように普段は努めている。

 そこ此処に居るものだからだ。

 だが、何故だか、前世の自分の知り合いだというその女の霊からは目がそらせず、言いようもないほど、胸が苦しくなった。

 早く上がってくれと願う。

 利樹は、胸許から一枚の写真を取り出した。

 八咫がくれた古い写真だ。

 爆撃された病院で働いていた者たちと高坂透(こうさか とおる)が写っている。

 津田秋彦も――。

 彼もまた、今とまったく同じ顔でそこに写っていた。

 髪型だけが少しさっぱりしているが。

 それが余計に、この写真を撮ったあと、ちょっと散髪に行ってきた、みたいな感じがして。

 この写真の秋彦と今の秋彦との連続性を感じる。

 ……顔だけなら、確かに似ているな、と思いながら、高坂透を見つめたあとで、利樹はそれをしまった。