「前世の記憶を引きずるのはよくないと、二式野を見ていて思った。

 でも――

 それでも、お前が高坂透しか愛さないというのなら、俺は弓削利樹を捨てても、高坂になりたい」

 利樹はいつかの高坂のように、まっすぐ自分を見つめてそう言ってきた。

「理屈じゃないんだ。

 俺は俺の人生も、今まで生きてきた記憶も大事だ。

 でも、俺はお前に愛されるためなら、すべてを捨てても高坂になりたい。

 昔はあの夢を見るのは嫌だったんだ……。

 あの夕空を飛ぶ戦闘機の夢」

 それはおそらく、死の直前の高坂の記憶だ。

「見るたび、胸苦しくなって、苦痛だった。

 でもお前に出会ってからは、あの夢だけが俺の支えだった。

 あれを見る俺は、きっとお前が求める高坂の生まれ変わりなんだろう。

 そう思って――」

 真生、と利樹はもう一度、真生の手をとった。