失われている高坂の記憶。
それらをすべて捕まえられたら、真生を捕まえられる気がしていた――。
次の日の夕方、いつもより早くに利樹は学校に行った。
保健室に行こうとして、廊下の向こうからちょうど友だちと歩いてきた真生と出くわす。
そのとき、あの曲がかかった。
花のワルツだ。
掃除の時間のようだった。
八咫が真生からこれが掃除の曲だと聞いていたせいで、この学園の掃除のときの曲はこの曲になっているようだった。
真正面から来た真生を利樹は見つめて言った。
「……顔色が悪いようだ」
えっ?
悪いですか?
と不思議そうな顔をした真生の白い手を、
「ちょっと来なさい」
と言ってつかむ。