そのあと少し、八咫と話して、帰ることにした。

 いや、帰ると言っても、学校の今は使われていない宿直室になのだが。

「学校なら、警備システムもあるし。
 夜間は人居ないから、燃えてもお前だけだろ」
と八咫が言ったので、とりあえず寝泊まりすることにしたのだが。

 もう放火の心配もないので、家を探さなければな、と思っていた。

 斗真が俺を追い出そうと持ってきた広告のマンションも悪くないが、と思ったとき、八咫が言った。

「……お前も、二式野も、生まれ変わっても前世を引きずる。

 俺もそうなんだろうかな」

「どうした、急に」

「いや、この歳だ。
 いつお迎えが来てもおかしくないから、いろいろ考えるんだよ」

 老眼鏡を置いた八咫は、ぎしりと座り心地の良さそうな椅子に背を預ける。

 そして、こちらに聞かせているのか、ひとり呟いているのかわからぬ口調で言ってきた。