斗真が呟く。

「薬局の……」

 調剤薬局の二式野(にしきの)という男だった。

 利樹と同じアパートに住んでいた男だ。

「来ると思っていたよ。
 薬局に行って、引っ越したアピールをしてみたんだが、お前、休みだったからな」
と利樹は言う。

「もうすぐ結婚するんだ……」

 二式野はそう呟くように言った。

「でも、お前を見ていると、不安になるんだ。

 何故だかわからないが、お前が居ると、今の幸せがすべて、一瞬にしてかき消えてしまう気がして」

 他の人間が居ないときにアパートに火をつけようと思った、と二式野は言う。

「俺も居なかったぞ」

「わかっていたけど……。

 いや、居なかったからこそ、つけたのかも。

 殺したかったわけじゃないんだ。

 でも、間近でお前の顔を見ていると、なんだかわからないが怖くなって――」