人を殺したあと、高坂さんが強く抱きしめてくれて。

　目を覚ましたあと、渕上婦長が来て、
「大丈夫。
　すぐ帰るから」
と言って、高坂さんは行ってしまった。

　利樹には利樹の人生があるのだから、高坂を押し付けてはいけない気はしているのだが。

　あまりにもそっくりなので、つい、重ねて見てしまう。

　そんなことを考えている間に、そのコートの男は斗真の家の前でなにかに火をつけた。

　それを家の中に放ろうとする。

　だが、その瞬間、音もなく背後に忍び寄っていた利樹が男を捕まえる。

　もみ合いになったので、思わず、真生は走り出していた。

「こ……っ！
　弓削先生っ」

　だが、ひょろっとしたその男は簡単に、利樹に投げ飛ばされていた。