「お前がなにを思って、此処に居るのかわかっている。

 だが、危ないだろう。

 こうして、犯人が後ろから現れるかもしれないのに」

「……弓削先生には犯人、わかってるんですか?」
と真生は訊いた。

「顔を見たからな」

 誰かはわかっている、と利樹は言う。

「だが、何故、そいつが俺を殺そうとしてるのかまではわからなかった。
 八咫の言葉を聞くまでは」

 そのとき、真生の後ろの通りを窺っていた利樹が、うん? という顔をした。

 話しているうちに、つい、通りの方に少し出てしまっていたのだが、真生は利樹に連れられ、塀の陰へと戻る。

 そっと物陰から窺っていると、反対側の通りからきた薄手の地味なコートを着た細身の男が斗真の家の前で足を止めた。

「真生、大丈夫だ。
 すぐ戻るから、此処に居ろ」
と言って、利樹は行ってしまう。