部活の時間は怪我も多いので、夕方覗くか、と利樹は夕方になってから、学園に向かった。

 林を抜けて、学園に行くと、吹奏楽部が練習している音が聞こえてくる。

 なんとなく真生のパイプオルガンを思い出しながら、校庭を眺めて歩いていると、夕日を背に、走り高跳びのマット近くに立っている真生を見つけた。

 ……なにやってんだ、陸上部でもないのに、と思っていると、真横で声がした。

「あれは、体育の時間、全然、飛べなかった居残り組だ。
 ゼロ点もつけられないんで、もう一度飛べと言われたらしい」

 従弟の弓削斗真《ゆげ とうま》だった。

 いつもなにかを探求しているような厳しい顔つきをしているので、その容貌のわりにモテないようだが。

 斗真を小さいときから知る自分は、

 いや、こいつ、ただこういう顔なだけで、意外となにも考えてないんだけどな、と思っていた。

 夕日が眩しく、目をしばたたきながら、真生を見て利樹は言った。

「なんであいつ飛べないんだ。
 あの身長で、あの脚の長さだったら、ひょい、と跨げるだろうが」

「……なのに、バーを蹴り上げて落とすのが真生なんだよ」

 お疲れ、と素っ気なく言って、斗真は行ってしまったが、グラウンドを回って校門に向かいながら、斗真が真生の方を見ているのが、此処からでも窺えた。