「ああ、もしかして、三丁目の火事?
 放火って聞いたけど」
という夏海の言葉にも真生は表情を変えることはなかった。

 やはり、知っていたようだ。

 何故か周囲で聞いていたクラスメイトたちが顔色を変え、ざわついた。

「えっ?
 弓削先生のアパートが放火?」
と誰かが呟き、みんなが斗真を見る。

「……俺じゃねえぞっ。
 っていうか、あいつ、結局、それで、うちに来てたんだから、逆効果だろっ」
と斗真は怒鳴った。

 どうでもいいが、なんでみんな、真生を巡って俺と利樹が対立関係にあるのを知ってるんだ。

 いや……対立してもいないか。

 俺が真生に心を残しているだけの話だ。