真生には放火の話はしていない。

 アパートの事情で、斗真の家に居ることは言っているが。

 だが、近所なので、察しているかもしれない。

 放火のあったアパートが自分の住居であったこと。

 その日の夜、ふと目が覚めた。

 ぐっすり眠ったと思ったのに、まだ2時だった。

 こんな夜はもう眠れなくなったりする。

 少しカーテンを開け、月を見上げた。

 そんな風に月を真生と見たことがあるような、ないような。

 たまにふっと高坂透の記憶らしきものが過ぎるのだが。

 捕まえようとすると、逃げていく。

 まるで、真生だな、と利樹は思った。

 不安になる――。