利樹は無言で理絵の後ろの壁のコルクボードに貼られている写真を指差した。

 高校入学時の真生と斗真が校門前で撮った写真だ。

 斗真なわけはないので、真生しか居ない。

「あらあらー、真生ちゃんは斗真にと思ってたのに。

 利ちゃん、モテるじゃないの。
 譲ってあげてよ~」
と理絵が言ってくる。

「そうだな。
 斗真は可愛いが――」
と言うと、すでに可愛いと言われる年ではない、と自分では思っているらしい斗真が箸を落とした。

「だが、真生は譲れんな」

「まあ、情熱的。
 利ちゃんにそんな一面があったとはね」
と言う理絵に、利樹は箸を置いて言った。

「俺は不器用なんだ。
 ひとり、これ、と思ったら、変われない」

「そんなの俺もだがっ!?」
と斗真に言われたときには立ち上がり、茶碗をさげていた。