「ただいま」
と利樹が斗真の家に帰ると、居間でスポーツニュースを見ていた斗真が驚いた顔をする。
「お前、呑んで帰るって言わなかったか?」
まだ一時間しか経ってないぞ、と壁の時計を見ていた。
「職場の呑みだったんだろ?
どんな付き合いの悪い奴だよ」
とお世辞にも人付き合いの良くなさそうな斗真にすら言われる。
だが、斗真の母、理絵(りえ)は、
「ちょうどよかった、利ちゃん。
お腹空いたから、なにか食べようかなと思ってたのよ。
お茶漬けでもどう?」
とキッチンから顔を覗けて言ってくる。
ああ、ありがとうございます、と言って、斗真の座るソファに一緒に腰掛けると、
「酒くさいな、も~」
と斗真が眉をひそめた。
「そんなに呑んではいないんだが。
隣に居た女が酒をこぼして」
と言うと、へえ、という顔を斗真がする。
「どんな人なんだ? その女の人」
「知らん。
男ではなかったな、というくらいしか記憶がない」
と言って、おい……と言われる。