「俺とお前は仲が悪かったそうじゃないか。
 お前と親しくしていたら、真生が俺は高坂じゃないんじゃないかと勘ぐるかもしれん」

 そう言ったのだが、白衣のポケットに両手を突っ込み立つ秋彦は、
「やだね」
と言う。

「俺には高坂を恨み、陥れねばならない理由があった。
 だけど、弓削利樹にはない。

 俺はな、高坂。

 ……じゃなかった、利樹」
と言いかえ、秋彦は言う。

「お前が医師としての俺を信用して、病原体の在り処を教えてくれたとき、本当は嬉しかったんだ」

 嬉しかったし、感動した、と言う。

「あのとき――

 本当はお前こそが医師になるべき男だったな、と思ったよ」
と目を伏せ言ったあとで、秋彦はこちらを向き、言ってきた。

「だが、それでもお前を殺さないという選択肢は現れなかった。

 ……まあ、真生のせいで殺しそびれたけどな」
とその拳で、あのとき、銃で撃ち損ねた胸を叩いてくる。