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「いなくなったってわかったときの悠真の慌てぶりはすごかったよ」


帰り道、倉田がぽつぽつと語り出すのを私は聞いていた。


「急に台所からいなくなったわけだろ?それも婚約指輪置いて。最初はなんかあったんじゃないかって走り回ってた」


私は黙って聞いていた。


「1日中捜して、警察にも連絡して、でもやっぱり見つからなくて……それでもあいつは捜し続けた」


そういう人なんだ、あの人は。そういう人だから好きになったんだ。


「悠真……周りからいろいろ言われなかった?婚約者に逃げられたとか、結婚詐欺だとか…………」


倉田は「まあな」と頷く。

「でもあいつの人柄で直接言ってたのは俺ぐらいだけど、カンのいい奴だから周りがそう言ってたことに気づいてただろうな」


そんな場面が想像できてしまって、私は泣きたくなった。あんなに優しい人がどれだけ苦しんだだろうか。