――2年後。私と悠真は結婚した。
その夜、2人は新しい家には戻らず、式場の近くのホテルに泊まった。
「悠真、今日から改めてよろしくお願いします」
「いえいえ。こちらこそよろしく願いします」
丁寧に頭を下げて笑い合った。
大勢の人に祝福された、人生で最も幸せな1日だった。だけど、ここに本来来るはずだった人物が来られなかったのは寂しい。
私の考えていることがわかったのだろう。悠真がレストランに行こうと言い出し、私は頷いた。
1階のレストランは混んでいて、30分並んでようやくテーブルに座ることができた。
ウェイトレスはまだ来ない。
「…………」
代わりに、隣に座る女の子と目が合った。彼女は交互に私と悠真を見る。
「結婚おめでとう。さっき見えた」
彼女は気さくに話しかけてきた。私と悠真は顔を見合わせてからありがとうと言った。
だけど、女の子の次の言葉は、
「ほんとだよ。世話がやけるよ……」
ん?耳を疑って再度女の子を見ると、彼女ははにかんだように笑って走り去ってしまった。
入れ違いにウェイトレスが来る。
「ご注文をお伺いいたします」
「まさか……」
「はい?」
「まさかねぇ…………」
END