**倉田 side**

 
俺は2人の変化をその瞳でしっかりと見ていた。

とうとうこのときが来たんだな。そう思うと少しだけ寂しさを感じるような気もしてきた。


吉井と康樹の驚く表情が見て取れる。

もう2人は元の世界に戻ろうとしている。真実を知って、あるべき場所に戻らなくちゃいけないから。


ここは2人にとって自分を守るための世界だった。

だけど、いつまでもここにいるわけにはいかない。


自分が逝く前に2人をちゃんとあるべき場所に帰すこと。それが俺の役割だと思った。



ったく、世話がやけるんだよ。吉井も悠真も、俺がいなきゃ話すこともできなかったくせに……。誰のおかげでここまで来れたと思ってんだよ。


ほんとに……ほんとに……
もう面倒はみきれねぇ。後は自分らでやっとけよ。




「倉田!」


必死にこっちに手を伸ばそうとしてくる吉井を見る。


違うだろ。この手を伸ばすのは俺じゃねぇ。お前のことは悠真が幸せにしてくれる。あいつはそういうやつだ。守ると決めたら絶対守ってくれる。



1つだけ欲を言えば――――


「倉田!!!」

「はっ?」


そのとき、吉井が強引に腕を掴まれた。それと同時に俺も何かに引っ張られてしまった。



――――その手を俺が守りたかった。