「……本当は俺たちはここにいない存在なんじゃ……ないですか?」


それに私は答えることができなかった。こんな非現実的な状況を見せられて、もう何を思えばいいのかわからなくなってしまった。

どうしたらいいんだろう……


しんと静まり返る世界。自分たち以外には誰もいないのかもしれない。

ふと思った。この世界に倉田がいなければいいと。そうしたらきっと彼は生きているような気がしてきた。


だけど、現実は常に私の思っている方向とは別の方へ進む。



「よぉ」


目の前にはずっと捜していた人物――倉田が現れた。








「なんとなくわかってた。お前らが思い出すの」


倉田はいつものように軽い調子で話す。その様子は事故のことなど全く意識していないようだった。


「俺はあの事故で死んだ。たぶん」


私は心の中に重い石がのしかかるのを感じた。