何度もここへは来ているが、来るたびに景色が変わって見える。今日改めて見てみると、道路にははっきりと見てわかるほどのブレーキの跡がついていた。

まるで何かを思い出すたびに1つ1つ現実に引き戻されていくようだ。


花はあいかわらずそこに供えられてあった。たぶんこの間見た女の人のものだろう。



私は失礼だとは思ったが、その花を間近で見てみることにした。なんの花かはわからなかった。


「ハッピーバースデー……」


康樹君の声に驚いて振り返る。一瞬そういう名前の花かと思ったが、彼はどうやらその花についていたカードを読んだだけのようだ。



「誕生日……橙子さんっていつですか?」

「私は6月だけど」

「俺は7月です」


どういうことだろう。この花が置かれたのは12月26日だ。いくらなんでも離れすぎている。もしかしたらここで死んだのは私たちではないのかもしれない。


だけど、2人の中に渦巻いていた嫌な予感は消えなくて、むしろさらに深まっていくのを感じた。


「ねぇ……誰か26日に誕生日の人って、いましたっけ?」


康樹君の声は少しだけ震えていた。


私は頭の中である1つのできごとを思い出していた。

トラック、鉄パイプ、犬、それから――……


「――倉田……」